小学生の絵画レッスン 形の見方
子供の絵の世界
子供の絵には対象だけを描いたものが多く、背景が描かれないのが普通です。絵では背景をもののまわりに描きますが、子供には画面という意識が少ないので背景をどのように描いたら良いのかわかりません。絵がかけない理由は日常生活でのものの認識と絵画上での認識とが別のものだからです。「赤い果物」とか「黄色い本」とかの認識は対象物の概念です。日常ではそうした概念で対象が理解できるのですが、
絵では対象の視覚的な状態という別の見方が必要です。いわゆる児童画と絵画との違いは概念で構成された絵か視覚で構成された絵かの違いです。絵を習うということは、「視覚的」なものの捉え方を学ぶことです。
歴史的に見ても、人間の成長過程を見ても、絵は概念を並べた象徴的な図像から視覚的な絵画へと発展しました。はじめは対象は象形文字と同様の事物の象徴として扱われました。そのような図像が絵画的となったのは対象の概念を伝える象徴画像から視覚的な情報を伝える図へと変化した時からです。子供の絵の多くには視覚という考え方がありません。子供の絵では「お母さん」はいつも正面を向いて立っています。泣くことも怒ることもありませんし、遠くにいるときでも小さくなることもありません。それはその図が母を表した象形文字と同じだからです。子供のそうした象形文字の図で文章を描いているのが児童画です。児童画で構図といえば、その文字図像を大きく描くことで、絵画的な視点のことではありません。
レッスン1:本とオレンジ
オレンジは球形で本は四角形です。球はどこから見てもほとんど同じ大きさ、同じ形に見えますが、四角は薄く見えたり菱形に見えたり台形に見えたりします。四角は右目と左目でも形が変わって見えます。絵では一つの視点、右目なら右目で、左目なら左目で、同じ姿勢で見えた形を描きます。まずはモチーフ全体と球形との比例関係から始めます。画面全体何個のオレンジを並べたらいっぱいになるかから一個のオレンジの大きさと位置を割り出します。はじめのレッスンではできる限りモチーフと画用紙との大きさを同じにしておくと良いでしょう。比例に慣れていない子には、同サイズが一番わかり易いからです。
本は四角ですから、角が4つあります。その位置がわかれば、本の四角が描けます。空間にある視覚的な位置関係を見る練習となります。はじめ子供は戸惑います。本が四角であるのはわかりきっているからです。四角いものがひし形に見えたり台形に見えたりするのは誤りだと純粋な子供の心は判断します。写実的な絵画に描かれた本を見せても、子供は瞬時に絵の中の台形を四角い本と理解してしまいます。自分で描いた台形やひし形が四角く見えたときに初めて子供は納得するので、他人の描いた絵を見せてもすぐに視覚的に描こうとはしません。簡単なモチーフで、子供の反応を見ながら、ゆっくりと進めて行くのが良いでしょう。レッスン1から完璧を目指さないで、行けるところまで行ったら、色彩や影など別の話題に切り替え、無理強いをしないことです。多少の歪んだ形でも視覚的な判断が見られたらそれで良しとします。
視覚的な表現はこのような形になるでしょう。
記事検索
NEW
-
query_builder 2024/09/29
-
大倉山秋の芸術祭に参加しています
query_builder 2023/10/31 -
デッサン初歩 楕円を描く
query_builder 2023/10/15 -
立方体を描く 初級デッサンその2
query_builder 2023/09/19 -
立方体を描く 初級デッサン
query_builder 2023/08/27