大倉山 絵画教室 / デッサンレッスンについて

query_builder 2026/04/18
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今週のモチーフ090

絵とアート、もしくは技術と表現


絵の教室で教えるのは絵の描き方です。アートではありません。国語で文章の書き方を教えるのと同じで、国語では文章として必要な要素とその順序、単語の成り立ちや言葉や文法を教えるのです。「絵はアートだ」とよく言われます。「アートだから価値がある。情操教育だ」と必要が説かれたりします。しかし、絵だからといってアートを教えるわけではありません。アートというのは、創作することで、創作に必要なオリジナリティとか完成度ということで、習う段階の次に来るものです。「絵はアート」というのは「人の言葉にはその人の思想がある、哲学がある」といって基本的な文法を教えるよりも早くオリジナリティを教えるようなもので次元がずれています。書道教室とシナリオ講座ほどの
開きがあります。

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デッサンの要点


絵はかたちと色ですから、まず初めに取り掛かるのは、かたちの伝え方を学ぶことです。デッサンのレッスンで伝えようとしているのは対象を見たとき見えるものの中からどこを観察したら良いのかと言う絵としての優先順位についてです。生まれたときからものを見ています。それなら自然、生まれつき絵は描けるはずとなるはずですが描けないのはなぜでしょうか。人間がモノを見るのは対象を理解するためです。声を掛けて返事が返ってくれればもう見ません。対象の人物がいる事が分かればよいのです。日常の感覚で見えるものとはモノの利用価値です。利用できるか、利用できないか、危険か、危険ではないかといった対象の利用価値を見分ければ視覚の役割としてはそれでよいのです。それが日常的に「見る」ということです。誰々くんがいた、誰々さんがいたけれども何色の服だったか記憶にないというのがよくあります。誰であるか認識すればそれで十分で,それ以上の視覚情報は必要ありません。普通に「見る」と言った時とデッサンで「見る」とは別のことです。


見るということ


本の上にりんごを置いて描いてみると、日常の「見る」感覚が強い人は四角い形の上に丸を重ねます。本当に直角に四角く見えるのは真上から見た時だけです。デッサンではひし形のように歪んだ四辺形の上に丸い形が乗ります。「本は四角い」は概念としては正しいのですが、その通りの状態でしたら、真上から見たか、りんごが落ちてしまうかです。さらに本の横に置かれた円筒形の花瓶があるとすると底が平で口が楕円だったりするのは平らに置ける、花が挿せる形だと説明してくれている訳です。これらはモノの概念です。l概念を見てるのであって視覚的な現象としてのかたちを見ているのではありません。日常生活では対象が何であるか概念的意味として対象を知れば十分であるに対してデッサンで伝えるかたちとは視覚的な体験の全体です。

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観察の要点


デッサンで重要視するのは形態と質感です。布で覆われた箱が今回のモチーフです。布に包まれた箱があると伝えれば良いのですが、箱は直接には見えません。そこで包まれた箱の大きさのヒントとなる陰影はどこにあるのか、箱の布への干渉は何処に現れているのか、といった姿勢で必要箇所を選び出し、そこが表現されるように描くのです。たくさんあるシワの中から箱の向きや大きさに関わるものを選び、それらを中心に据えて描きます。表面は布ですので、その布の柔らかさ、生地の厚さなどを描きながら箱の存在を示します。表面と全体のバランスです。表面が走りずぎても全体の形態の表現は弱くなり、全体ばかり強調しても表面の繊細な質感は失われます。中味が箱なのはわかっていますし、表面が柔らかな布で覆われているのもわかっています。デッサンでの表現は互いのバランスです。いずれは衣服と人体の観察に発展してゆく練習なのです。

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基本は見えない


デッサンで勉強することは基本的に透視図法と明暗法ですが、完成したデッサンを見る側からはほとんどそのことは意識されません。自然にモチーフを眺めた状態と描かれた状態とが同じだから、ただ当たり前に映るだけだからです。ただ問題となるのは間違えた時、不自然に歪んで見えた時だけです。基本に気づかないとすると、見る側が興味を持ち評価するのは、モチーフの質感や描写の密度です。そこで見せるデッサンでは質感描写が中心となることが多くなります。質感や色彩に関しては「見たまま」に描けることに評価が集まります。日常の感覚では手触りであったり、新鮮味であったりする感覚が期待されるからでしょう。

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丁寧な観察とは


質感表現は丁寧な観察で密度があればどうにかなると考えがちですが、やはり表面感だけではデッサンは成立しません。基本の形態をみる視点が必要になります。まず全体が立方体か円錐か球かを考え、基本形を表現する要点を何処に置くか決めてデッサンの描写に取り掛かります。面で捉えるか明暗で捉えるか、それとも回転体の母線を表現するかなどを先に考えて取り掛かるのです。面で捉えて多面体とした場合、面ごとの特徴は何なのかを観察します。面ごとの性質が異なることで多面体が組立ち立体が成立します。

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表現の二様


モノを観察する。絵の基本です。しかし、絵には語る絵と感じる絵とがあります。感じるのは作者の感覚です。語る絵では皆が使う記号的な表現が使われますが、感じる絵では観察した表現が使われます。児童画は言葉のように語られる記号的な表現でうめられています。子どもたちは観察が表現になるとは思っていません。表現は言語的な意味を並べたもの、誰にでも伝わるものと考えています。観察は個人的な経験で、共通の言語にならないと思っているのでしょう。しかし、絵は違います。自分の感覚を皆と共有したいと言うのが表現です。自分がモノを見ているのをどの様に伝えるのかを学ぶのが絵画レッスンです。モノのどこを観察するのか。かたち、色、光や影、屈折や反射、照り返しや奥行き、さらに柔らかさや硬さ、軽さや重さを通して自分は何を感じているのかを観察する姿勢を学びます。


固有色と表面感


モチーフの材質感をデッサンで表現するには固有色と表面感が問題となります。身近にある野菜でも、質感の違いを意識してモチーフとすればそれなりにデッサンの勉強になります。形態だけとか、色彩だけとかの安易な表示にならずに、全体のバランスを考えた表現を探しましょう。

生徒作品02

空間表現


デッサンで丁寧な観察をすれば表面の質感は表現できますが、空間はそうは行きません。空間は画面全体が空気のように感じられるように、描いている絵を観察して、前後関係が見えるかどうかで判断します。白バックで描く時は白い空間に包みこまれてゆくように表現しなければなりません。風景画では空気遠近法という言葉がありますが、卓上のデッサンでは空気遠近法のような空気の層があるわけでもないのですが、前後関係を示す技法として空気遠近法と類似の技巧を使います。実際のモチーフの前後関係が強弱を作ることに依ってデッサン上に生じるかを観察しながら描き進めるのです。モチーフの前後関係はモチーフの丁寧な観察からだけでは描けません。デッサンを習う必要はこんなところにもあります。

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モチーフの選び方


デッサンの勉強をするのに、高価なモチーフや珍しいモチーフを用意する必要はありません。基本的な形態、球や円錐、立方体や円柱を入れて質感のはっきりと違いのあるものを配置すれば、それだけでモチーフは十分です。ここでは大きな紙袋を潰して紙の質感を強調して、絵として利用しています。質感が面白ければ、ゴミの様な紙袋でも十分モチーフになります。かつては新聞紙がよく使われましたが、昨今見かけなくなりました。道に落ちていた落ち葉を拾ってきて彩りとします。デッサンの目的は画面上での構成力、光、形態、ボリューム、空間、質感などですが、身近なものだけでも十分の手応えがあります。

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