小学生に絵のレッスンは必要ですか?
小学生は小学生らしく大人の考えを入れずに自由に描かせたら良いのではないかと考える人もいるでしょう。表現は自由で子供らしく伸々しているのが一番良いと誰しも考えるでしょう。自由に表現するために自由に道具が使えたら不自由な道具で描くよりも自由な表現ができると思いませんか。絵のレッスンで伝えることはその道具の使い方です。絵の具を用いた色の表現や観察の仕方などは絵を描くための手段です。多くの手段を持った者がより自由に描くことができるようになるのではとの考えから当教室ではレッスンを進めています。
小学生の絵画レッスン 観察
絵のレッスンの内容には絵の具の使い方があります。小学生ではまず初めにクレパスの使い方を練習する機会を作ります。表現したい絵があっても思った色が出せないとがっかりしてしてしまいます。クレパスの扱い方、色づくりを練習する過程で次々と新しい色との出会いがあります。イメージできる色が多くなるのもレッスンの目的です。どんどんできてくる色を観察して自分の絵に取り入れる。それによって表現の幅が広がってきます。色づくりの練習もそれだけを目的とすると単調ですぐに飽きてしまいます。そこでやはりモチーフの観察と合わせると次々と発見があり、色づくりも多様になります。子供は対象を一瞥して、単純に表現しようとします。透明のコップがあればおばけの絵のように白い線で囲むだけで透明の意味になります。これは観察ではなく、コトバのような象徴表現です。子供はこうした記号表現に慣らされているので眼の前に置かれたものでもそのままには見ようとしません。そこで対象の何を観察するのかを伝える必要があります。ものの関係、重なり、連結、反射、屈折、反転、歪曲、テクスチュアと様々に体験させる必要があります。
絵のものに対する姿勢には表現と観察とがあります。表現は自分が思ったモチーフの有り様を相手に伝えようと努力することです。しかしそのためにはモチーフが他のモチーフとどのように違うのか観察していなければなりません。観察した違いを表現するのが絵です。カメラのような機械的な観察ではなく、絵での表現はそれぞれのものの概念に乗せて表現します。ものの概念はカメラには写りません。概念は人間の言語や文化習慣が生み出すもので、自然物の森羅万象をどこで分節化するかという問題を含んでいます。子供にそのようなややこしい問題が理解できるはずがないと考えるかもしれませんが、むしろ逆で、子供がコトバを話す以上、自然物を分節化しているのです。対象の観察以前にコトバとしてものの概念が先行しています。「概念」から「観察」へが絵のレッスンです。
観察の一例として、一本の花が生けられた水差しを課題とします。
1. 花瓶は左右対象形で持ち手、注ぎ口がつくことで非対称となっている。
2. ガラスの透明部分と水の入ったガラスと水が区別のつかなくなった部分が生じる。
3. 水差しの底にガラスの厚い部分がありガラスレンズとなり光と影が隣接して写り込んでいる。
4. 水面は単に透明なのではなく、水差しの底を映している。
5. 水の入った水差しの底の厚いガラスの面は鏡のようになり背景を映している。
6. 水差しの水の入っている円錐部分の水はレンズとなり背景の左右が反転する。
7. 花の茎は水に入ると屈折して見た目の位置がずれる。
8. ずれるだけではなく一段と太くなり緑の鮮やかさも増す。
このように、今何を観察するのかを一瞬の一筆に込めるのが絵画力です。それぞれの箇所の独立した概念を持つことで、このように小学生も観察して絵を描けるというわけです。
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